2013年11月18日 師匠小澤敏也は遠くへいってしまいました
いまから書く事は、自分がいままでお世話になった経緯、自分の記憶の為に残します。
小澤さんに出会っていなかったら、今一緒に演奏しているミュージシャンと出会う事もなく、まったく別な人生を送っていたでしょう。
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詳細に記録していないので年ははっきり覚えていないけど1999年頃、小田急相模原からから溝の口に引っ越しして一人暮らしを初めたとき、SUNNY SIDEというレコード屋と六曜館という喫茶店があり、そこからのつながりでsax奏者の松本健一さんとパンデイロッカー小澤敏也さんに出会う。
生まれて初めてパンデイロという楽器と演奏を目の前で観て聴いて衝撃的だった。演奏方法もビックリだったけど、小澤さんのパンデイロは生音にオーバードライブがかかっていて歪んでいた。「なんじゃこりゃ〜〜」
自分はギターを弾いていたけど、どうしてもリズム感が悪くドラムとかパーカッションを勉強したいと思っていたとき、ちょうど六曜館でパンデイロ教室を小澤さんが始めた頃で教室の門を叩く。「柳元君はギター弾きなんだから、パンデイロはやんないほうがいいよ」と言われたのも懐かしい。
教室は女の子3人に自分を含めみんな初心者で6人くらい。
小澤さんは生涯パンデイロ発展途上、かつ当初は教える事が初めてでいろいろ試行錯誤しながらレッスンしていました。先週教えたことを次週では「あれはなしっ!」と言ったり、どれだけ速く長く叩けるか耐久演奏したり、、、(でも、このいったりきたりの練習が身になっているんです)
目から鱗だったのは、サンバの楽器やジャンベ、コンガなど、パーカッションのアンサンブルリズムをパンデイロ一つに置き換える、または複数のパンデイロでアンサンブル形式に分けるという発想でした。実際にサンバの楽器やジャンベなどを生徒みんなで演奏して、パンデイロに持ち替えて感触を覚えたり。
パンデイロで演奏すると決してオリジナルの音と同じにはならない、別なものになっているけど、でもそれもいいという考え方。
フレーズパターンを間違えても「それもいいねぇ」という柔軟な考え方、他者とアンサンブルする時のある程度のルールもあったけど、小澤さんには基本的に間違っているという発想がなかった。演奏しないという演奏も大事とか、周りの音を良く聴くこととか。
自分は当時いろいろなパンデイロのワークショップに足を運び、その都度「すごいっ!」と感動していたけど、そのなかでも小澤さんは特異なパンデイロ奏者であること、そしてその変わったところが自分は好きだなぁと感じていた。
「音に反骨精神がでている」「ラテンパーカッションじゃなくてロックパーカッション」「焼き直しではなく常にオリジナリティを追求している」「冗談で周りを笑いに巻き込むけど、楽器、音楽に対してすごく真面目」
そして小澤さん独自のパンデイロだけのアンサンブル、パンデイロバツカーダ。
レッスン後にお茶を飲みながら楽器の事やら、奏法やら、アンサンブルやら、世間話やら、冗談やら、はなしだしたら1〜2時間は止まらない小澤さん(笑)、でもその中にはいろいろ大切なことがありましたよ。
リズム感の悪さについて小澤さんに相談したとき「リズム感は良いとか悪いということはなくて、どれだけのリズムの種類を知っているかだよ」といわれ、こんな自分でも演奏できるんだなと励まされたのは今でも身に染みています。
ある程度リズムが叩けるようになると、人前で演奏する機会を頻繁に作っていただき、ギターの中西文彦さん、尾花毅さんの藤沢ライブに飛び入りで混ぜていただいたり、トランペットの渡辺隆雄さんと小澤さんのユニット、ピカイアの「ピカイア祭り」に生徒みんなで参加したり。段階を踏ませていただいたことで、自分も一人パンデイロで少しずつ演奏できるようになり、、、
2010年9月25日に、日本におけるブラジル音楽の聖地、プラッサオンゼにJINGLE GYMで初めて演奏できた時に「僕のやってきたことがここまでできるようになったか」とメンバー紹介の看板を観ながら感慨深くコーヒーを飲んでいた姿も忘れられないです。
一時期、演奏する事に迷走していた時もあったけど、2013年から加入したバンドの音源を聴いてもらって、自分のスタイルは小澤さんの演奏スタイルとはまるで違うアウトプットになってしまっていたけど、「人柄が演奏に出ている、それができるのであれば音楽を続ける意味があるよ」と、まるで自分の事のように喜んでくれたときは、さすがに泣いてしまった。
マルコススザーノ氏から小澤さんに渡された種は、小澤さんのフィルターを通して、また小澤さんから受け継いだみんなはそれぞれのフィルターを通して確実に広がっていますよ。
どうかこれからもよろしくお願いいたします。
◆以下の映像はJINGLE-GYMのアンサンブル組曲を少人数で一発撮りした映像です。
※そういえば撮影直後に小澤さんはもう次の組曲の事考えてましたねぇ〜、立ち止まらないんです。
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pandeiro batucada part1 Neguinho Mão
pandeiro batucada part2 March
pandeiro batucada part3 Salsa del Pandeiro
pandeiro batucada part4 Cante Pandeiro
pandeiro batucada part5 Brown Mão
pandeiro batucada part6 Afro Afro